サンフランシスコで初めての本格的な「江戸前寿司」

Maruya

去年の11月、「新しい寿司屋がオープンしたらしい」とフーディーな友達から知らされた。彼が手にしていた記事には、アメリカのどこにも無いようなシンプルでエレガントな店内が映し出されてた。

寿司の写真も握りと肴だけでロール等は一つもない。「これは本物らしいね」。私たちは予感していた。それからから数ヶ月後、今「Maruya」は、地元メディア、口コミサイトで「サンフランシスコ一の寿司屋」という評価を得ている。

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ミッション地区にレストランがオープンする度にメディアとフーディー族の注目が倍増するのは周知の事。しかしこの道40年のベテランオーナーシェフ、佐々木雅喜氏は、「美味しいものを提供するだけが目的なので、地域は全く意識していません」と一言。「東京にある上質な江戸前寿司を出したかったんです。その為の規模だけを考慮しました」という佐々木氏の店造りは、長い寿司職人としてのこだわりであり、理想である。

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トレンディーなミッション地区だがバートの駅の近くは様相が違い、低所得者層が多い。そんな通りに看板も何ももない、ドアだけが妙に新しくおしゃれな入り口がある。そこが「Maruya」だ。中に入ると、全く無駄が無い、シンプルな構えに大きなカウンターと木造りの戸棚が高級感を醸し出している。木のぬくもりを表現した内装は彼のこだわりの一つ。あらゆる材木屋を周り探し出したとっておきの黒グルミ(ブラックウォルナッツ)を使用したカウンターは、どの店よりも美しく、おもてなし感がある。カウンター、テーブルにあるのはテーブルセットのみ。よくありがちな醤油セットなどは置かない。このシンプルさがいい。

 

佐々木氏は、80年代からベイエリアの寿司レストランのあらゆる流れを見てきた。NYでマリオットマーキース内の 「Kasen」、「Blue Fin」でエグゼキュティブ寿司シェフを努めた後、SF「St. Regis」内でプライベートシェフを経て、初めて自身の店を構える。一方、パートナーの末吉秀文氏(すえよしひでふみ)はNYとLVのトップ日本食レストランの寿司シェフを勤めたベテラン。二人の創造力がコラボする。

 

メニューはたった4項目。オマカセ2種類と寿司、刺身の盛り合わせ。これに全て集中をさせる。開店は5時半からだが、毎日朝からその日の仕込みに入っている。「ただ魚を切るだけじゃない、そこにどれだけの旨味を閉じ込めるかが職人の見せ所」。江戸前寿司にこだわるまささんは、魚の水分の調整をし、昆布や塩で占めたり、旨味を引き出した魚と最高の食感を与える寿司を握る。まさにフード科学だ。「美味しい寿司の要素の60%はシャリだと思っています。これがうまく作れないと寿司屋としての価値がない」と佐々木氏。「ロールに慣れているアメリカ人にどのように『江戸前寿司』を教育するのですか」?という私の質問に、「教育というより、自分のこだわりを貫くだけです。例えば醤油のリクエストがあれば、『まず食べてみて下さい。醤油は必要ありません』と答えます。ウチに来る大半のお客さんは、東京で寿司を食べた経験があり、常連になる人はその価値を理解しています。もちろん醤油を欲しがる客からは次の日、口コミサイトにボロボロに書かれたりしますが、そんな事は気にしません。分かる人に分かってもらえれば良いです」と答えた。厳選した魚は「プリオーダー」でほとんどが築地から24時間以内に同店のプレートにのる。それがプレミアの価値だ。

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サンフランシスコには美味しい寿司屋と言われる店は何件かあるが、ロールを出さないほどこだわりの店は2、3件くらいしかない。アメリカでそれを貫くのは、ビジネスとして難しい。「無いからこそ、消滅させてはいけない」という佐々木氏のフィロソフィーはこの時代、”選ばれた客”に受け入れられている。のれんを付けないのは、”隠れ家的”存在にする理由もある。

 

日本酒のコレクションは純米から大吟醸までわずか17種類。この理由について、「日本酒は3日以上は置けない。3日以内にグラスにサービスする酒を空にする必要がある」と言う。確かに酒も生もの。日本酒はワインより日持ちするが”美味しい状態で保つ管理も重要なポイントだ。

両氏がサンフランシスコに江戸前寿司をオープンした事で、今までアメリカナイズされていた寿司の常識が変わるかもしれないと思うと、彼らの貢献は偉大である。

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2931 16th Street, San Francisco /

415 503 0702

http://www.maruyasf.com/

Tuesday–Saturday 5:30–11:00pm